本の紹介
- 本の名前
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三千円の使いかた
- 著者名
- 出版年
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2018年

あらすじ
お金にまつわる知恵と人間模様を温かく描いた物語。
御厨(みくりや)家の三世代の女性たちが織りなす連作短編集で、それぞれが自分のお金との向き合い方を通して、人生の選択をしていく姿が描かれています。
物語のはじまりは、24歳の会社員・御厨美帆(みくりやみほ)が、
祖母・琴子の口癖「三千円の使いかたで人生が決まる」という言葉を思い出すところから。
美帆は、将来に漠然とした不安を抱えながら働いており、職場での出来事をきっかけに「このままでいいのか」と悩み始めます。
ある目標を決め、手取り20万円台の中で1000万円貯金を目指し、節約生活をスタート。
スマホ代を見直し、格安SIMに乗り換え、昼食をお弁当にし、支出の一つひとつに意識を向けていく過程がリアルに描かれています。
母・智子は、専業主婦として長年家庭を支えてきた女性で、今は更年期や老後のことが不安。
夫との関係も冷え切っており、手術を経験したことを機に、離婚を考えるように。
離婚後の生活や経済的な現実に直面する中で、自分の人生を見つめ直していきます。
姉の真帆は子持ちの専業主婦。
夫の収入に頼りながら「貯金1000万円」を目指して工夫を重ねています。
友人との価値観の違いに悩みながらも、自分の選んだ家庭の幸せを大切にする姿が印象的。
そして、物語の中でひときわ輝きを放つのが、祖母・琴子。
専業主婦だった琴子は、夫を亡くし、年金で慎ましく生活する、節約と貯金の達人。
彼女は若い頃からの「三千円」の積み重ねによって、老後も自立した生活を送ることができています。
73歳にしてアルバイトを始めようとする姿や、園芸を通じて人とつながるエピソードからは、
人生まだまだこれからという姿勢が感じられます。
この本では、たった三千円という小さなお金もその使い方一つで人生の質や方向性が変わる、
大きな金額ではないからこそ、日々の選択の積み重ねが大切であると、さまざまな登場人物の生き方を通じて描かれています。
本文の引用
- 「三千円くらいの少額のお金で買うもの、選ぶもの、三千円ですることが結局、人生を形作っていく、ということ。」
- 「あの人のせいで、私は我慢している、というような状態はやめるべきです。それはお互いを不幸に追い込むことになりますよ。」
- 「人生は理不尽なもの。でも理不尽なことがなかったら、何のための節約なの? 経済なの? 節約って、生きることを受け入れた上ですることよ。費用対効果なんてない、ってことを受け入れてからの節約なのよ。じゃなかったら、私たちみたいな年寄りは死んだ方がいいってことよね。」
- 「お金や節約は、人が幸せになるためのもの。それが目的になったらいけない。」
感想
小説なのに、お金関係の啓発本のような。
お金の使いかた、価値観、いろいろと考えさせられます。
お金と幸せは切っても切れない問題だけど、幸せの基準もお金の価値も、それを測る物差しは人それぞれ。
たとえ家族やパートナーでも。
『解説』で垣谷美雨さんも書いてたけど、
あるある問題ばっかりだったから、ストーリーを身近に感じたし、頭の中で再生できそうなくらいリアル。
先が気になってページが進みました。
小森さんの “費用対効果” って考え方、嫌いじゃなかったな。
自分とお金との関係を見直すヒントをくれる一冊。
節約、貯金、家計管理に関心のある人はもちろん、
幸せとか “人生” から目を背けている人にも読んでほしいなと思います。
ライフステージが変わるときとか、お金のことで迷いや不安があるときなんかも、絶対読むべき。
著者の紹介
- 1970年神奈川県生まれ
- 大学では日本文学を専攻し、卒業後に秘書としての勤務経験がある
- 「リトルプリンセス2号」で第34回NHK創作ラジオドラマ大賞を受賞
- 「はじまらないティータイム」で第31回すばる文学賞を受賞し、小説家としてデビュー
- 料理や日常の小さな出来事を通じて、人々の心の機微を描く作風が魅力
- まずはこれ食べて
この本をおすすめしたい人
- お金の使い方・貯め方に不安を感じている人
- 「節約=我慢」と感じている人
- 老後の生活やお金に漠然と不安がある人
最後まで読んでいただきありがとうございました。